結婚戦争での敗因分析の仕方
前号では、自己の意志に反して相手が自分から離れた場合は、どんな理由があるにせよ敗者であり、敗者の自覚と敗因分析が重要であると述べました。今回は具体例で敗因分析を如何に行うべきか考えます。
アンカップリング通信18号の「きらいになったの。だから別れて」と言われたAさんの場合を考えてみます。平成8年当時妻が子供二人を連れて家を出て三年目の記事でした。 Aさんは、「嫌いになった」と言う理由だけで出ていった妻を「19、20の娘でもあるまいし、これが、30過ぎた女性の言ったり、やったりすることなのでしょうか」と出ていった妻の非難に終始します。自分は、「酒、暴力、浮気、生活費を入れないなんてことは一切ない」「何事にも批判、疑問を持つタイプ」の素晴らしい人間であると確信され、「我が儘な」妻からの離婚請求を頑として拒否されていました。
私が妻の代理人として扱った離婚事件で、裁判所での被告(夫)質問で次のように語った夫がいます。
(私)奥様が出て行かれたことは寝耳に水だったのですか。
(夫)そのとおりです。
(私)その後、調停で奥様と話し合われましたね。
(夫)随分話し合いしました。
(私)その話し合いで、奥様の不満もお判りになったと思いますが、夫としてどういう点は悪かったと思いましたか。
(夫)……(しばし考え)エーと、基本的には私は悪くないと思っています。
(私)えっ、とすると奥様が出ていったのは全て奥様が悪い、奥様の我が儘と言うことですか。
(夫)その通りです。
(私)貴方は離婚を拒否されていますが、そんな我が儘な奥様が戻ってもうまくやれるはずがないと思いませんか。
(夫)そうは思いません。妻は、我が儘を反省して戻ってくるべきです。
私はこの遣り取りに絶句しました。傍聴席で聞いていた妻は終了後私に対し、開口一番「あんなバカとは思わなかった」と夫に対する絶望感を確固たるものにしました。
この夫も「酒、暴力、浮気」などしない真面目な方で、決定的離婚理由のないケースでしたが、一審の裁判官はこの遣り取りを聞いて夫婦間の破綻を認定し離婚を認めてくれました。先ほどのAさんと同じ考えの夫ですが、正に敗者の自覚が出来ず、敗因分析到底不能な不幸な例です(次号に続く)。
(平成12年12月 1日記)