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小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

親子

母を親権者として離婚後母死去の場合、子の親権者はどうなるか

○子どもが居る夫婦が、子どもの親権者を妻として離婚した後、子どもが未成年のうちに親権者の母(元妻)が死亡した場合、当然、父(元夫)が親権者になるのでしょうかとの質問を受けました。私は、当然に父が親権者になるとは限らないと覚えていたので、そう答えてその根拠条文を探しましたが、見つからず一瞬焦りました(^^;)。
関係条文は次の通りです。

第834条(親権喪失の審判)
 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

第836条(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し)
 第834条本文、第834条の2第1項又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。

第837条(親権又は管理権の辞任及び回復)
 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。
2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。


○上記の通り、単独親権者が死亡した場合の、親権者変更について直接規定した条文はなく、考え方としては①当然後見開始説(従来の多数説)、②親権当然復活説、③親権者変更審判説があり、最近は、③親権者変更審判説(無制限回復説)が実務でも学説でも有力になっています。これは、一律に後見開始・親権当然復活とはせず、以下の民法第819条6項を類推適用し、この福祉の見地から具体的事例に則して家庭裁判所において生存親の親権者としての適格性を判断して親権者変更の可否を決することができるとするものです。

第819条(離婚又は認知の場合の親権者)
 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
(中略)
6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。


○戸籍実務においては、単独親権者が死亡した場合、後見が開始し親権者変更の審判はできないとしていますが、家庭裁判所で親権者変更の審判が出ればその届出を受理するほかなくこれにより後見は終了し、職権により後見終了の記載をして差し支えないとしています。家裁実務としては、単独親権者が死亡して生存親がいるとき、後見人選任の申立がなされた場合でも、親権者変更の申立の趣旨を変更させた上で審判によって親権者を決定することになります。