本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「相続家族」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

相続人

代襲相続−直系卑属の場合と兄弟姉妹の場合の違い

○相続人が被相続人より先に亡くなった場合、相続人の子が、親を代襲して相続人になりますが、子、孫等直系卑属の場合と、兄弟姉妹の場合で、ちと要件が異なります。平成20年4月12日、弁護士会主催遺言セミナーで質問を受け、その条文上の構造等正確に答えることが出来ませんでした(^^;)。以下、反省の意味での備忘録です。

○民法第887条(子及びその代襲者等の相続権)で
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(注;相続欠格)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。

として、第1順位相続人を子と規定しています。

○被相続人の子が、被相続人より先に死亡、相続欠格該当、廃除によって相続権を失った時は、子の子即ち孫が代襲して相続人になり(民法第887条2項)、更にその代襲相続人が、同様にして相続権を失った時は、その子即ち曾孫が代襲して相続人となります(同3項)。但し、子の子であっても被相続人の直系卑属でないときは、代襲相続は出来ませんが(同2項但し書き)、この事態は、養子縁組前に生まれた養子の子と養親の間に生じます。

○民法第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)で
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
1.被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
2.被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。

と、子が居ない時の第2順位相続人として直系尊属(殆どの場合、親)、
直系尊属も居ない時の第3順位相続人として兄弟姉妹と規定します。

○第2順位相続人である直系尊属は、最初に両親、両親が亡くなっていた時は祖父母、祖父母も亡くなっていた時は曾祖父母と上がっていきますが、養親が居る場合、実親と養親全てが亡くなって場合初めて祖父母が相続人となります。直系尊属には代襲相続は、そもそもあり得ず、存在しません。

○問題は兄弟姉妹が相続人の場合、その兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなった場合ですが、民法第889条2項「第887条第2項の規定は、前項第2号の場合について準用する。」との規定で、その亡くなった兄弟姉妹の子が代襲相続人となります。代襲相続人となった子が先に亡くなった場合、その子が代襲相続人になるかと言うと、民法第889条2項は、民法第887条3項(代襲の代襲)を準用していないので、代襲相続は発生しません。

○結論として、被相続人の子が相続人である場合は、代襲相続は何代でも続きますが、兄弟姉妹が代襲相続人の場合は、代襲相続は一代限りで打ち止めです。昭和55年の民法改正前までは民法第889条2項で民法第887条3項(代襲の代襲)まで準用していたため、時に相続人が数十人を超えるような事案が生じ、相続を巡る法律関係が複雑になりすぎるため、兄弟姉妹については代襲相続は一代限りに制限されました。