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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

T字路進入車過失に関する平成23年3月14日横浜地裁判決要旨紹介

○一時停止標識のあるT字路からの進入自動車と優先道路走行中自動二輪車の衝突事故についての過失割合が争いになる事案を扱っており、その過失割合認定の参考判例を探していたところ、T字路交差点に入ろうとする「右左折進入車は交差道路を通行する車両等に注意するだけで足りる」ことから十字路交差点進入車とは異なり、直進単車、右左折四輪車の過失割合は「単車直進車に有利に修正すべき点もある」と判示した平成23年3月14日横浜地裁判決(自保ジャーナル・第1849号)が見つかりました。

○事案は、16歳男子高校生の亡Aは、平成21年11月10日午後11時頃、神奈川県藤沢市内で自動二輪車を運転直進中、一時停止道路から右折進入してきた被告運転の乗用車と衝突、死亡したため、両親は自賠責保険金を控除して父3447万6787円、母3435万5400円を求めて訴えを提起したものです。

○判決は、雨の夜間、40㎞制限道路を「55㎞~60㎞」で走行、転倒して衝突のA自動二輪車と一時停止道路からA車を認めたが、先に右折できると発進被告乗用車の衝突の「過失割合はA1割、被告9割」と認定しましたが、その過失割合認定部分を紹介します。

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8 抗弁について
(1) 本件交通事故態様について、被告が亡Aのバイクを直接目視で初めて発見したときの被告車両の位置を除いては、当事者間に争いがない。

(2) 上記(1)に、成立に争いのない証拠(略)を総合すると、次の各事実が認められる。
ア 被告が右折を開始し右方から進行する亡Aのバイクを発見した地点は、一時停止標識に従い一旦停止した位置から時速7㎞程度で前進し、被告運転車両が優先道路である亡Aのバイクが走行してきた道路に入りかかった地点であり、明らかな先入とは認められない。

イ 本件交通事故直前の亡Aのバイクの速度は、時速55㎞から60㎞であったところ、亡Aが走行していた道路の制限速度は時速40㎞であり、また、本件交通事故時は、激しく雨が降り続けていた。

(3) 上記認定事実によると、被告運転車両に明らかな先入があるとの事実は認められない一方、亡Aは、夜間の、かつ、激しく雨が降り続けていた道路において、制限速度15㎞以上の速度違反を犯していたものであり、この点について亡Aには一定程度の過失が認められる。

 しかし、通常の十字路交差点に入ろうとする右左折車は、交差道路を通行する車両等のみならず、反対方向から進行してきて右折する車両等にも注意しなければならないのに対し、突き当たり路からT字路交差点に入ろうとする右左折車は、交差道路を通行する車両等に注意するだけで足りるのであるから、これらの車両等に対しては十字路交差点におけるよりも注意がしやすいといえる。

 他方、直線路を進行する直進車としても、突き当たり路から進入する車両等は徐行してくるであろうと期待するのが一般の運転慣行と考えられ、また、直進路の方が突き当たり路に比して交通量も多く、主要な道路であることが通例であり、T字路交差点における単車(直進)と四輪車(右折)との事故については、四輪車同士の十字路交差点における事故よりも、単車(直進)に有利に修正すべき点もある。


 以上を総合すると、本件交通事故における過失割合は、亡A1割、被告9割とするのが相当である。

(4) 以上によれば、本件交通事故においては、原告ら側にも1割の過失があることが認められるから、これを原告らの損害合計金額との間で相殺すべきである。