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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故関連傷病等

髄液漏れ治療法、保険適用へ-患者ら悲願達成 医学研究前進の10年

○平成28年1月15日付け毎日新聞東京朝刊に以下の「髄液漏れ治療法、保険適用へ 患者ら悲願達成 医学研究前進の10年」との記事が掲載されました。これによると「治療効果が上がっていることを報告するとともに、画像検査で髄液漏れが見つかっても、ブラッドパッチで効果がない患者、代表的な症状の『頭を上げていると出現する頭痛(起立性頭痛)』がない患者が、それぞれ1割程度いることを明らかにした。これまで、ブラッドパッチの効果や起立性頭痛が『ない』ことが裁判などで患者でないと疑われる理由にされてきただけに、これらの最新の知見は患者の救済につながりそうだ。」とのことです。

○私の事務所でも平成28年1月現在受任中の13件の交通事故訴訟事件の内3件が脳脊髄液減少症発症を主張していますが、いずれも苦戦を強いられています。保険会社側から、事故直後からの、明確な「起立性頭痛」がなく、また「ブラッドパッチ療法」を数回受けるも余り効果がないことを理由に脳脊髄液減少症の発症を強く否認されています。

○これまでの交通事故で脳脊髄液減少症発症を理由とした損害賠償請求事件の殆どが、「起立性頭痛」がないこと、また「ブラッドパッチ療法」の効果がないことを理由に脳脊髄液減少症の発症自体を否認されるものが殆どでした。平成27年11月末日本脳神経外科学会理事長の嘉山孝正氏が発表したとの研究成果についての情報が重要です。この研究成果を受けて、脳脊髄液減少症診断基準が変更されたのかどうかについての情報が重要ですが、残念ながら現時点では、この肝心の情報が見つかりません。

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髄液漏れ治療法、保険適用へ 患者ら悲願達成 医学研究前進の10年
毎日新聞2016年1月15日 東京朝刊


脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)の治療法「ブラッドパッチ」が保険適用される見通しとなった。社会問題化してから10年以上。治療費に苦しむ患者らの悲願が達成する。しかし、激しい頭痛に代表される症状のつらさに加え、行政機関、職場や学校の理解の乏しさから、金銭的にも精神的にも追い詰められているのが実情で、患者の全面救済にはなお課題が残る。【渡辺暖】

「保険導入は『適』と判断しました」。先進医療技術の成果や問題点を話し合う先進医療会議。事務局の言葉に傍聴席の患者らはほっとした表情を見せた。

 ブラッドパッチは昨年6月までの3年間に1745件実施され、会議では直近の1年間に実施された577件の効果が報告された。有効477件、無効54件、不明46件で、有効性と安全性が認められた。

 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の中井宏代表(51)は「うれしい。患者や家族、医師たちの力でここまできた。保険適用されることで患者の救済は本格化するでしょう」と話した。

 ブラッドパッチは、患者の血液を背中から注射して癒着を起こし、髄液の漏れを止める治療法だ。「脳の周りを循環している髄液が減ると、激しい頭痛などの多彩な症状が出る」という、この病気の基本となる考えは1930年代からあり、ブラッドパッチの最初の報告は60年代にさかのぼるが注目されてこなかった。

 2000年以降、日本の一部の医師たちが、頭痛や吐き気、しびれなどを訴えながら原因が分からないでいる患者の中に、ブラッドパッチで大きな効果がある人が少なくないと気付いた。新聞やテレビで紹介されると、髄液漏れを診察、治療する数十人の医師に全国から患者が殺到する事態となった。

 一方で医学界は「硬膜から髄液は漏れるはずがない」との考えが主流で、ほとんど関心を持たれなかったが、05年に状況が変わる。

 交通事故で発症しても損害保険会社から補償されないため、患者と加害者側との訴訟が全国で起きていることが毎日新聞の報道で表面化。また、治療効果のあった子どもたちが、それまでの間「怠けている」「心の病」とみられてつらい思いをしていたことも分かった。

 07年に国の研究班が発足。11年に診断基準ができ、ブラッドパッチが12年に先進医療に承認されると、全国で約50の医療機関が名乗りを上げ、実績を積み上げてきた。

 こうした成果を社会に伝えるため、昨年11月末、研究班の班長で日本脳神経外科学会理事長の嘉山孝正氏は、記者らに研究成果を説明する場を設けた。

 治療効果が上がっていることを報告するとともに、画像検査で髄液漏れが見つかっても、ブラッドパッチで効果がない患者、代表的な症状の「頭を上げていると出現する頭痛(起立性頭痛)」がない患者が、それぞれ1割程度いることを明らかにした。

 これまで、ブラッドパッチの効果や起立性頭痛が「ない」ことが裁判などで患者でないと疑われる理由にされてきただけに、これらの最新の知見は患者の救済につながりそうだ。


困難な診断、伝わらぬ痛み

 脳脊髄液減少症患者・家族支援協会は先進医療会議を直前に控えた9〜12日、フェイスブックなどで緊急アンケートを実施し、患者117人の声を集めた。診断を受けた時期で対象を限定していないものの、最近の患者が置かれた状況がうかがえる。

 協力したのは男性44人、女性73人(うち24人分は家族らが回答)。発症原因は▽交通事故77人▽スポーツ事故8人▽その他の事故17人▽原因不明15人。

 体調悪化から診断まで「1年以上」69人、診断まで受診した医療機関は「6カ所以上」54人だった。髄液漏れを知る医師が少なく、なかなか診断されない実態を表している。一方で、診断まで「1週間以内」が7人、「1カ月以内」も5人おり、医療現場での周知が徐々に進み、早期に診断されることが増えつつある。診断されるまでの医療機関も「1カ所」7人、「2カ所」16人、「3カ所」11人だった。

 これまでの医療費は「50万円以上」が8割近くを占めた。1週間ほど入院してブラッドパッチを自費診療で受けると数十万円かかる。ほとんどの人が「保険適用」に期待していた。

 自由意見欄には悲痛な声があふれた。

 症状について「天気によって起こるめまい、頭痛はベッドの上でのたうちまわるほど」「起きてみないと体調が分からない。自死を考えることが多い」「おうと、頭痛、頸部(けいぶ)痛がひどい。つえがないと歩けない」などの訴えがあった。

 治療費への嘆きも多い。10代の子どもの患者の親は「事故から2年半かかって病名が分かった。母子家庭には治療費は大きな負担。勉学の遅れも将来も不安」と記した。10代で発症した30代の女性は「収入が絶たれ生活費も捻出できない。貧しい実家に身を隠し、駄目になっていく身体を抱えながら死を待つのがつらいです」という。

 外見から悪いところが分からないため、職場や家族になかなか理解されないことも重なり、「離婚した」「家庭崩壊」「失業」「地獄」の文字が並んだ。

 自賠責や労災、生活保護などの社会保障制度の関係機関は、早期に患者の実態を把握して諸制度の見直しや点検に着手することが求められている。