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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

人身傷害補償担保特約

過失割合不明な場合の人身傷害保険金請求金額・順序等関する質問4

○「過失割合不明な場合の人身傷害保険金請求金額・順序等関する質問3」を続けます。
この質問の事案では、Aさん、Bさん、いずれも相手方が信号を無視したと主張し、その真偽は不明なままです。この場合の過失割合を検討する鍵は、以下の条文にあります。

自動車損害賠償保障法(自賠法)
第3条(自動車損害賠償責任)
 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。


民法第709条(不法行為による損害賠償)では「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と規定されていますが、前記自動車損害賠償保障法第3条は、この損害賠償責任についての特別規定です。

○その意味は、民法上は、損害賠償請求者が加害者の「故意・過失」について立証責任を負いますが、交通事故による損害賠償請求では、自賠法3条の規定で、損害賠償請求者は、「その運行によつて他人の生命又は身体を害した」ことだけ主張・立証すれば足り、請求された方が、「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明」しないと賠償責任を免れ得ないということです。

○民法第709条に規定した損害は、「他人の権利又は法律上保護される利益」についての全ての損害ですが、自賠法第3条に規定した損害は「生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害」即ち人身損害に限定され、物損は含まれません。これは、人身損害については特に被害者保護の必要が大きく、それを強制責任保険で裏付けしたものだと解説されています。

○従って、Bさん運転の自動車と衝突して80日間も入院する大怪我をして最終的に後遺障害等級第12級になる損害を被ったAさんは、Bさんの自動車と衝突した人身損害が生じたことだけを立証すれば、Bさんが、前記「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明」しない限りAさんに生じた人身損害について全責任を負うことになります。但し、物損については、AさんがBさんの過失を立証できないと請求は棄却されます。

○ですから、Aさん、Bさん、いずれも相手方が信号を無視したと主張し、裁判手続をしても、その真偽は不明なままであれば、Bさんは、Aさんの人身損害について100%の賠償責任を負います。この事案では、事故証明書甲欄にAさんが、乙欄にBさんが記載されていますが、結局、AさんもBさんも起訴されることなく、また、行政処分も受けていませんから、目撃者もおらず、Aさん・Bさんいずれの主張が正しいか警察も判断できなかったもので、裁判をしてもBさんは自分の主張を立証できないと思われます。

○だとするとAさんが、Bさんに対して、Bさんの自動車と衝突して人身損害が発生したとの争いのない事実を主張して訴えを提起して、Bさんが事故の無過失を立証できないと100%Bさんの過失が認定されます。これを認めた判例は、昭和41年7月11日神戸地裁判決(判タ194号159頁)、昭和44年7月11日東京地裁判決(判タ237号232頁)、昭和47年12月20日東京地裁判決(判タ298号401頁)等多数あります。別コンテンツで判例文を紹介しますが、この事案でAさんは、Bさん乃至Bさんの任意保険会社とC保険を相手に訴えを提起すれば実損即ち裁判基準損害額を獲得する可能性があります。