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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

休業損害逸失利益

朗報-交通事故中間利息利率現状5%から3%に下げて変動制へ

○交通事故損害賠償請求の死亡事案・比較的重度後遺障害事案で損害の内最も大きな割合を占めるのが逸失利益(事故がなければ将来得たはずの利益)です。この逸失利益は、将来分を先取り・一括で取得するため中間利息(弁済期未到来の無利息債権の現在価値を算定するために、債権額(名目額)から控除すべき弁済期までの利息)が控除されます。この中間利息利率は、後掲平成17年6月14日最高裁判決(判タ1185号109頁、判時1901号23頁)で民事法定利率5%に統一されていました。しかし、平成27年にはこれが変更になるようで、被害者にとって朗報です。

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交通事故「中間利息」現状5%から3%に下げて変動制へ
毎日新聞2014年7月8日(火)20:52


◇法制審議会部会が法務省原案を大筋了解

 法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会は8日、交通事故の被害者らの逸失利益を算定する際に差し引かれる「中間利息」の利率を、現状の5%から3%に引き下げたうえで変動制とする法務省原案を大筋で了解した。利率が低いほど被害者に有利になる。今月末に提示される取りまとめ案に盛り込まれる見通し。法務省は法制審の答申を経て来年の通常国会への関連法案提出を目指す。

 日本損害保険協会によると、生涯月収の平均が約41万円の27歳男性(扶養家族2人)が後遺障害で仕事ができなくなった場合、中間利息が5%だと逸失利益は約5500万円だが、3%では約7400万円に増える。今回の見直しは、医療過誤や犯罪を巡る損害賠償請求訴訟にも影響を与える一方、保険会社の負担額が増えるため自動車保険などの保険料値上げなども想定される。

 民法は特別な取り決めがない場合の利率(民事法定利率)を年5%としているが、中間利息に関する規定はない。かつては中間利息を2%や3%とする地裁判決もあった。最高裁が2005年に「法定利率を適用すべきだ」と判断して5%に統一されたが、「5%の運用益を見込むのは非現実的」との指摘があった。

 法務省の原案によると、民事法定利率を3%に引き下げたうえで1%刻みの変動制に移行し、中間利息もこれと同様とする。見直しは3年に1回で、過去5年間の貸出金利の平均が1%以上変動した場合に限るとしている。

 部会は明治時代に定められた民法の契約・債権分野を時代に合わせて全般的に見直すため、09年に設置された。【和田武士】

◇逸失利益と中間利息

 事故や犯罪の被害者、遺族らが損害賠償を求めた場合、死亡や後遺障害がなければ得られたはずの「逸失利益」が算定される。一度にまとめて受け取った賠償金を運用すると利息が発生するため、計算上の生涯収入から、生活費や利息分を差し引いた額が逸失利益となる。この計算の際に差し引かれる利息を「中間利息」と呼ぶ。



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平成17年6月14日最高裁判決全文

主   文

 原判決中上告人の敗訴部分を破棄する。
 前項の部分につき、本件を札幌高等裁判所に差し戻す。 

理   由
 上告代理人田中登、同小黒芳朗の上告受理申立て理由(ただし、排除された部分を除く。)について
1 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。
(1) 被上告人らの子であるA(平成4年1月29日生。当時9歳)は、平成13年8月18日、上告人の過失によって発生した交通事故(以下「本件事故」という。)により死亡した。

(2) 被上告人らは、本件事故によるAの上告人に対する損害賠償請求権を法定相続分である各2分の1の割合で相続により取得した。

2 被上告人らは、不法行為等による損害賠償請求権に基づき、上告人に対し、本件事故による損害賠償を請求している。

3 原審は、Aの将来の逸失利益の算定における中間利息の控除割合につき、次のとおり判示して、被上告人らの請求を一部認容した。
 交通事故による逸失利益を現在価額に換算する上で中間利息を控除することが許されるのは、将来にわたる分割払と比べて不足を生じないだけの経済的利益が一般的に肯定されるからにほかならないのであるから、基礎収入を被害者の死亡又は症状固定の時点でのそれに固定した上で逸失利益を現在価額に換算する場合には、中間利息の控除割合は裁判時の実質金利(名目金利と賃金上昇率又は物価上昇率との差)とすべきである。民法404条は、利息を生ずべき債権の利率についての補充規定であり、実質金利とは異なる名目金利を定める規定であるので、これを実質金利の基準とすることの合理性を見いだすことはできない。また、旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)46条5号ほかの倒産法の規定や民事執行法88条2項の規定が弁済期未到来の債権を現在価額に換算するに際して民事法定利率による中間利息の控除を認めていることについては、いずれも利息の定めがなく、かつ、弁済期の到来していない債権を対象としており、弁済期が到来し、かつ、不法行為時から遅延損害金が発生している逸失利益の賠償請求権とは、その対象とする債権の性質を異にしているのであって、中間利息の控除割合についてこれらの規定を類推又はその趣旨を援用する前提を欠くものというべきである。

 我が国の昭和31年から平成14年までの47年間における定期預金(1年物)の金利(税引き後)と賃金上昇率との差がプラスとなった年は16年で、マイナスとなった年は31年であること、そのうちプラス2%を超えたのは3年(最大値はプラス2.3%)であり、マイナス5%を下回った年は16年(最小値はマイナス21.4%)であり、全期間の平均値はマイナス3.32%であり、平成8年から平成14年までの期間の平均値は0.25%であることによれば、Aの将来の逸失利益を現在価額に換算するための中間利息の控除割合としての実質金利は、多くとも年3%を超えることはなく、中間利息の控除割合を年3%とすることが将来における実質金利の変動を考慮しても十分に控え目なものというべきである。

4 しかしながら、原審の上記判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
 我が国では実際の金利が近時低い状況にあることや原審のいう実質金利の動向からすれば、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は民事法定利率である年5%より引き下げるべきであるとの主張も理解できないではない。

 しかし、民法404条において民事法定利率が年5%と定められたのは、民法の制定に当たって参考とされたヨーロッパ諸国の一般的な貸付金利や法定利率、我が国の一般的な貸付金利を踏まえ、金銭は、通常の利用方法によれば年5%の利息を生ずべきものと考えられたからである。そして、現行法は、将来の請求権を現在価額に換算するに際し、法的安定及び統一的処理が必要とされる場合には、法定利率により中間利息を控除する考え方を採用している。

 例えば、民事執行法88条2項、破産法99条1項2号(旧破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの)46条5号も同様)、民事再生法87条1項1号、2号、会社更生法136条1項1号、2号等は、いずれも将来の請求権を法定利率による中間利息の控除によって現在価額に換算することを規定している。損害賠償額の算定に当たり被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するについても、法的安定及び統一的処理が必要とされるのであるから、民法は、民事法定利率により中間利息を控除することを予定しているものと考えられる。

 このように考えることによって、事案ごとに、また、裁判官ごとに中間利息の控除割合についての判断が区々に分かれることを防ぎ、被害者相互間の公平の確保、損害額の予測可能性による紛争の予防も図ることができる。上記の諸点に照らすと、損害賠償額の算定に当たり、被害者の将来の逸失利益を現在価額に換算するために控除すべき中間利息の割合は、民事法定利率によらなければならないというべきである。
これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由がある。

5 以上のとおりであるから、原判決中上告人の敗訴部分を破棄し、損害額等について更に審理を尽くさせるため、同部分につき、本件を原審に差し戻すことにする。
 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判官・濱田邦夫、裁判官・上田豊三、裁判官・藤田宙靖 裁判長裁判官・金谷利廣は、退官のため署名押印することができない。裁判官・濱田邦夫)