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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

過失相殺・損益相殺・消滅時効

赤信号自転車過失割合に関する平成23年3月8日名古屋地裁判断紹介2

○「赤信号自転車過失割合に関する平成23年3月8日名古屋地裁判断紹介1」を続けます。
被告は、被告車の対面信号に対する信頼が保護されるべきであると主張するが、本件交差点においては、原告進行道路の車両に対しては信号機による交通整理はされていないのであるから、原告進行道路から本件交差点に進入した原告車に対する関係において、被告車の対面信号に対する信頼が保護されるべきとはいえない。」との表現が、ちと理解に苦しむところですが、被害車両が進行してきた道路は、歩行者専用信号があるも、自動車用の信号は設置されていないようです。

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(4) 信号について
ア 被告は、被告車の対面信号に対する信頼が保護されるべきであると主張するが、本件交差点においては、原告進行道路の車両に対しては信号機による交通整理はされていないのであるから、原告進行道路から本件交差点に進入した原告車に対する関係において、被告車の対面信号に対する信頼が保護されるべきとはいえない。

イ もっとも、前記(1)ウ記載のとおり、本件事故時には、本件歩行者用信号は赤信号であった。そうすると、本件歩行者用信号によって交通整理されている横断歩道の直近を通って自転車で被告進行道路を横断しようとする原告にとっては、被告進行道路を進行してくる車両が、その対面信号が青信号であることから、減速することなく本件交差点に進入することを予測することは容易である。また、本件交差点において自転車で被告進行道路を横断するような場合には、至近距離にある押しボタン式の本件歩行者用信号を操作し被告進行道路を進行する車両の対面信号を赤信号にした後に被告進行道路を横断するという、より安全な通行方法も存在する。そうすると、直近に歩行者用信号機が設置されていない交差点の場合と比較すると、原告の過失はより大きく評価されるというべきである。

(5) 住宅街であること、被告進行道路の道路幅について
 原告は、本件交差点付近が住宅街であることを、過失割合を定める際の事情として考慮すべきであると主張するが、証拠(略)によれば、本件交差点付近は住宅街であることが認められるものの、証拠(略)により認められる本件事故発生時刻ころの歩行者や自転車の通行量を考慮すると、本件交差点付近が住宅街であることが、過失割合を定めるにあたって考慮すべき事情とはいえない。
 また、被告進行道路は車道部分が約7.2m、歩道部分も併せると約14mの幅員であり、幅員が狭いとはいえない。

(6) 先行車による死角について
 被告は、被告が原告車を発見することが可能であった地点から約3秒間、原告車は先行車によって被告の死角に入っていたと主張し、被告本人はこれに沿う供述をする。
 しかし、交差点を通行する際に左右の見通しがきかない場合には道交法42条1号により徐行義務があるところ、仮に原告車が先行車の死角に入っていた場合には、被告にとっては本件交差点は左右の見通しのきかない交差点であったといえ、被告には徐行義務が課せられるところ、被告車が本件交差点に進入しようとした際に徐行してい たとは認められないのであるから、原告車が死角に入っていたとしても被告の過失が軽減される状況であったとはいえない。

(7) 原告車の一時停止について
 被告は、原告車は本件交差点に進入する前に一時停止をしなかったと主張するが、被告が原告車に気付いたのは原告車が本件交差点に進入した後であり、被告は、原告車が一時停止しなかったことを見ていたものではない。また、証拠(略)によれば、先行車の運転手は原告車が止まっていたような感じもすると述べており、その他、原告車が一時停止をしなかったと認めるに足りる証拠はない。

(8) 過失割合について
ア 被告には、本件交差点に進入するにあたって、原告進行道路を通行する車両等に特に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない義務があるところ(道交法36条4項)、左右の確認が不十分であった過失が認められる。

イ 原告は、本件交差点に進入するにあたって、被告進行道路の幅員が原告進行道路よりも明らかに広いのであるから(被告進行道路の幅員は約7.2mであるが、原告進行道路の幅員は約4.4mである。)、被告進行道路を通行する車両等の進行 妨害をしてはならないところ、被告車が進行しているにもかかわらず、本件交差点に進入した過失が認められる。そして、前記(4)のとおり、本件歩行者用信号が赤信号であったことは原告の過失の程度を定める際に考慮すべき事情である。

ウ 以上に述べた本件事故の態様、原告及び被告の過失の内容などを総合考慮すると、本件事故についての過失割合は被告6割、原告4割と認めるのが相当である。