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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故重要判例

線維筋痛症と交通事故との因果関係が認められた判決

○「線維筋痛症と交通事故の因果関係が否認された判決」で、平成17年10月13日東京地方裁判所判決(自動車保険ジャーナル・第1620号)を紹介していましたが、その後、線維筋痛症と交通事故の因果関係を認めた判決が出ましたので紹介します。それは、平成22年12月2日京都地方裁判所判決(自保ジャーナル・第1844号)です。原付自転車運転中の接触で骨盤骨折等負った60歳女子の線維筋痛症の因果関係を認めて7級4号を認定しました。

○まず事案概要です。
・平成13年11月20日午後1時40分ころ京都府相楽郡町内町道を直進していた被告運転の普通貨物自動車と側道から町道に合流して進行していた原告運転の原動機付自転車とが接触し原告が転倒した。
・原告は骨盤骨折(左仙骨、右恥骨、坐骨骨折)、第5腰椎横突起骨折平成13年11月20日から平成14年2月28日まで101日入院、その後、平成14年2月28日から同年4月27日までリハビリテーション科に60日入院
 骨盤骨折(両坐骨、右臼蓋部)ないし骨盤骨折(仙骨、右恥骨、坐骨)腰部打撲、左第5腰椎横突起骨折等の診断名で同年5月2日から平成17年2月14日までリハビリテーション科に73日通院
 平成14年12月21日から平成22年5月ころまで骨盤骨折後両下肢筋萎縮、両膝関節炎、両股関節拘縮、変形性腰椎症、変形性頸椎症、右肩関節周囲炎、両変形性膝関節症等の診断名でC外科通院
 平成20年9月29日、同年10月18日にD病院通院
 平成16年8月3日から平成20年8月21日まで骨盤骨折後筋挫傷(骨盤周囲筋挫滅)、L第4第5椎間板変形症、廃用性筋萎縮(骨盤周囲筋挫滅)、線維筋痛症等で38日E病院通院
・自賠責保険後遺障害等級認定手続において、平成21年5月11日ころに通知を受けた認定において、右骨盤、臀部、大腿部の痛み等について、「局部に頑固な神経症状を残すもの」(12級12号)と、腰部の激痛、背部にかけて広がるこわばり等について、「局部に神経症状を残すもの」(14級10号)と認定されて、併合12級認定
・平成21年6月2日に京都府から右膝関節の機能全廃(4級)及び体幹機能障害(3級)(歩行が困難)で身体障害者等級表2級認定


○次に判決概要です。
・自賠責認定は、12級であるが、継続的で改善しない腰部、大腿部、背部、肩部、頸部などの痛み、こわばり等18箇所中11箇所以上で圧痛があることが確認されたこと等から、アメリカリウマチ学会基準等も考慮して「線維筋痛症」罹患を認定
・本件事故によって負った骨盤骨折等の重傷による肉体的精神的ストレスが作用していることとの因果関係も認め、「神経系統の機能に傷害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」として7級4号認定
・本件事故の3年半余の側溝転落事故での右膝関節障害に伴う2ヶ月入院と機能障害は本件事故との因果関係が「認められない」とし、本件事故での線維筋痛症等での症状固定は入院6ヶ月、通院30ヶ月と認定
・優先道路直進中の被告普通貨物車と非優先道路から左折進入後の原告原付自転車の接触につき、速度の早い被告車の「左前部角ではなく、側面部に接触箇所がある」等から、原告車が被告車に寄って行き接触と認定、原告の「過失割合は7割とする」と認定
・3300万円の請求に対し約746万円(元金)の損害を認定


○自賠責保険認定後遺障害等級が12級のところ、京都府の身体障害認定等級は2級で大きく乖離し、原告は自賠責等級は少なくとも4級と主張し、判決は、線維筋痛症と事故との因果関係も明確に認め、最終的には自賠責後遺障害等級7級を認定しました。残念ながら原告過失が7割と大きく認定金額は相当削られましたが、線維筋痛症と事故との因果関係を認めた画期的判決です。