本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

交通事故関連傷病等

非器質性精神障害と交通事故−因果関係認定要素

○財産法人日弁連交通事故相談センター交通事故相談ニュース24号に中村直裕弁護士まとめ「非器質性精神障害に関連する基礎知識と裁判例の概観」の因果関係認定における判断要素についての備忘録です。

 非器質性精神障害(躁うつ病、統合失調症等)における精神症状と交通事故との因果関係認定は、
@精神症状発現時期と治療経過
A精神症状発症の原因となる要因の存在
B事故以外に関連する事情
等による総合評価となる。

1.症状発現・増悪時期と治療経過(症状持続等)
(1)発症時期がポイント
−「事故前にはなかった症状が事故後に生じた」ことが重要
 この症状発現時期のみから因果関係を肯定する裁判例さえ存在

(2)事故と症状発現までの期間が短い程良い
 事故発生から精神症状発現までの期間が短ければ短いほど,精神症状は事故による精神的打撃の結果と認定しやすい。
 逆にその期間が長くなればなるほど、症状発現の原因が事故以外の要因とされやすい。
参考判例大阪地裁H15.2.5(交民36.1.202、「うつ病発症自殺と交通事故との因果関係を認めた判例2」)
 遅延性の精神症状については、事故からの時間的経過を経て症状が生じてきたことについて納得出来る裏付けが必要

(3)症状発現時期に関連した注意点
@事故に付随する事情影響
精神症状発現の原因は、事故発生と合理的に関連性を有する事故後の事情も加味する必要がある
A精神症状の実際の発症時期と精神科的診断時期との時間的ズレ
身体的障害がある場合、その治療に気を取られ精神症状が発現していても精神科診断が遅れることがある
B症状の変動
症状の改善及び悪化の可能性

2.因果関係判定におけるその他の判断要素
(1)裁判例における因果関係認定のためのプラス事情

@事故発生自体及び事故受傷自体の精神的打撃性の痕跡
事故自体の重大さ、加害者の一方的過失ないし加害者の重大な過失、受傷部位・程度、

A事故に付随する事情による精神的打撃性の痕跡
治療効果が上がらないこと、解雇等経済的不安、欠勤による職場復帰への不安、学校を休むこと等による社会的不安、加害者(代理人を含む)の対応、家族との関係悪化、

(2)裁判例における因果関係認定のためのマイナス事情
@事故に関連しない心理的不安要因
職場復帰・職場での不適応、社会生活上の不適応、
これらは、事故に関連する場合もあり、この場合事故との関連性についてきめ細かな主張が必要と思われる。

A事故とは直接関連しない事情・疾患
精神的脆弱性・ヒステリー的性格、てんかん障害

B既往症
既往の抑うつ神経症、統合失調症