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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

休業損害逸失利益

無職者の休業損害−休業期間中途で無職となった場合

○休業損害とは、青本によれば交通事故による受傷やその治療のために休業し、現実に喪失したと認められ得べかりし収入額とすると定義され、傷害の治癒あるいは後遺障害の症状固定まで発生する就労不能ないしは通常の就労が出来ないことにより生ずる収入減少額を損害として把握するものであり、事故に遭わなかっとしても現実の収入が得られなかったであろう場合には損害の発生は否定されると説明されています。

○交通事故実務上休業損害請求は、通常、1ヶ月の月収(1日の収入)×休業月数(休業日数)=休業損害として行いますが、請求を受けた保険会社が争うのは、先ず休業月数(休業日数)即ち休業期間で、その傷害でそれ程休業する必要がない、その休業期間は長すぎると主張し、次に1ヶ月の収入額について、それ程収入がないはずだと争います。

○なお、自動車総合保険の人身傷害補償条項損害算定基準での休業損害は通常以下のように規定されています。
2、休業損害
受傷により収入(専ら被保険者本人の労働の対価として得ているもの)の減少が生じた場合、減収額に応じて支払うものとし、原則として下記の算式による。なお、被保険者が所属または勤務する企業等の損害は対象とならない。
(1)有職者の場合
下記の算定方法による。ただし、1日あたりの収入額が5,500円を下回る場合およびその額の立証が困難な場合は、1日につき5,500円とする。
対象休業日数は、実休業日数を基準とし、被保険者の傷害の態様、実治療日数等を勘案して治療期間の範囲内で決定する。
給与所得者
事故直前3か月間の月例給与等
---------------------------- × 対象休業日数
90日
(中略)

(2)家事従事者の場合
現実に家事に従事できなかった日数に対して、1日につき5,500円とする。

(3)無職者、金利生活者、地主、家主、恩給、年金生活者、幼児、学生または生活保護法の被保険者等の現実に労働の対価としての収入がない者の場合は支払対象とならない。


○上記の通り、休業損害は、通常、1ヶ月の月収(1日の収入)に期間を乗じて算出しますので、収入のない無職者の場合、基がゼロですから休業損害は発生しません。収入のない者が事故で入院しようが、通院で時間を取られようが、いずれにしても収入がないから、「現実に喪失したと認められ得べかりし収入額」は発生しませんので、休業損害が認められれないのは当然です。

○実務で問題になるのは先ずたまたま事故時点では無職だったが、求職中の場合です。この場合は、直近の有職時点での給料、職業資格、職業経歴等から事故による休業がなければ、休業期間中に就職の可能性があり、就職すれば一定の収入を得られたと主張し、休業期間が長く認定されれば、そのうちの一定期間の休業損害が認められる場合もあります。

○次に問題になるのは、事故による休業期間中に解雇されて無職になった場合です。例えば事故によって15日間入院し、その後15日合わせて1ヶ月の休業期間が認められる場合に事故から10日目に解雇され、11日目以降無職状態になった場合では、保険会社は、無職になった時点で収入がなくなるので、その後たとえ休業状態であっても、休業損害は発生しないと主張します。

○しかしこの解雇原因が、事故による傷害での休業が原因の場合で事故と解雇に因果関係がある場合、再就職の相当期間の休業損害を請求することになりますが、この相当期間の認定は、ケースバイケースです。次に解雇理由がリストラ等事故とは全く無関係の場合は、前記、失業者と同じ考え方になります。再就職の可能性が吟味されます。時に、不当解雇だからその後の収入喪失は解雇無効を主張して雇用主に請求すべきであり、事故とは無関係と主張される場合もあるようです。この場合、実務的には雇い主に解雇理由明示を求め、事故による休業状態が理由であることを立証し、事故と因果関係があると主張すべきでしょう。