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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

人身傷害補償担保特約

任意保険・人傷保険・自賠責保険3社共同被告訴訟が合理的2

○「任意保険・人傷保険・自賠責保険3社共同被告訴訟が合理的1」を続けます。
A保険とC保険を共同被告とした場合、被告A保険の損害賠償金(対人賠償責任保険金)支払義務の被告C保険の人身傷害補償保険金支払義務の関係が問題になりますが、認定された過失割合によって異なります。以下、場合分けです。
@被害者過失割合ゼロ即ち過失相殺減額がない場合
全部不真正連帯債務

A訴訟基準総損害額に対する被害者過失割合減額分が人傷基準算定保険金額より小さい場合
一部不真正連帯債務・一部別個
人傷基準算定保険金額の内訴訟基準総損害額に対する被害者過失割合減額分が不真正連帯債務で、それを超える部分が別個の債務になる

B訴訟基準総損害額に対する被害者過失割合減額分が人傷基準算定保険金額と同じかより大きい場合
全く別個

C被害者過失割合100%の場合
対人賠償責任については請求が棄却され、人傷基準算定保険金額の支払しか認められない。

以下、実際の訴状での具体的記述です。

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12 被告A保険(対人賠償)と被告C保険(人傷保険)の支払義務の関係
(1)被告A保険の損害賠償支払義務と被告C保険の保険金支払義務
 被告A保険は原告に対し、本件事故により原告に生じた全損害を訴外長沢の過失割合部分に相応した部分の損害についての支払義務を負う。これに対し被告C保険は、訴外Eとの自動車総合保険契約人身傷害補償条項に基づき、被保険者原告に生じた前損害の内同契約約款損害金算定基準に従った損害について、原告の過失割合如何に拘わらず支払義務を負う。但し、被告C保険は原告に保険金を支払った場合、原告の訴訟基準での総損害額の内被害者の過失割合に対応する損害額を上回る限度でのみ原告の被告A保険に対する損害賠償請求権を代位取得する関係にある(東京高裁平成20年3月15日判決、判時2004号143頁参照)。

(2)原告にも過失割合が存在する場合
 本件では、原告は過失無しと主張しているところ、被告A保険は原告の過失割合が少なくとも10%は存在すると主張して争いになっており、万一、原告の過失割合が認められる場合、被告A保険の支払義務がその割合に応じて減ぜられる。被告C保険は、上記の通り、原告過失割合10%相当部分損害を超える金額については、原告の被告A保険への損害賠償請求権を代位取得するが、原告に対する関係では、約款算定基準で算出した保険金額全額支払義務を負い、極端な場合、原告過失100%の場合でも約款算定基準に従った損害について保険金支払義務を負う。

(3)紛争の一括解決の必要性
 本件では、原告の後遺障害等級も争いになっており、この等級認定及び過失割合の認定如何で被告A保険の損害賠償義務と被告C保険の保険金支払義務金額が変動する。そこで原告は紛争の一括解決を目指して被告A保険と被告C保険を共同被告としたが、両者の支払義務の関係は、両者の金額と原告の過失割合認定如何により連帯関係が生じる場合と生じない場合があるが、連帯としても、債務者間に緊密な関係がなく、弁済及びこれと同視し得る事由を除いて、一債務者に生じた事由が他の債務者に影響しない不真正連帯債務と思われる。万が一、原告過失100%として被告A保険に支払義務が認められなかった場合は被告C保険のみの支払義務となることは言うまでもない。

(4)被告A保険と被告C保険の支払義務の関係場合分け
 仮に原告総損害額が金6000万円、被告C保険保険金支払額が金3000万円と認定された場合で、
@原告過失割合20%のとき、
被告A保険支払義務は金4800万円、被告C保険支払義務は金3000万円となるが、被告C保険支払義務3000万円の内原告の20%過失割合相当部分金1200万円については別個の債務で、内1800万円は被告A保険との不真正連帯債務になり、原告の合計取得金額は6000万円、
A原告過失割合50%のとき、
被告A保険支払義務と被告C保険支払義務はいずれも金3000万円であるが、両者の関係は不真正連帯債務ではなく、別個の支払義務となり、原告の合計取得金額は6000万円、
B原告過失割合80%のとき、
被告A保険支払義務は金1000万円、被告C保険支払義務は金3000万円となるが、両者の関係は不真正連帯債務ではなく、別個の支払義務となり、原告の合計取得金額は4000万円となる。