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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

慰謝料

訴訟での過失責任否定による慰謝料大幅増額例

○「訴訟での過失責任否定・5割過失相殺主張が慰謝料増額事由」では、訴訟にいたって段階でも自己の過失責任を否定し、少なくとも5割は被害者に過失があると主張したことについて、正当な権利主張を逸脱したものとして慰謝料増額事由になるとした平成21年9月11日名古屋地裁判決(判例時報2065号、101頁)を紹介していました。慰謝料増額と言っても死亡事案で認められた慰謝料が2200万円であり、さほど大きな慰謝料とは評価出来ません。

○これに対し平成13年2月28日東京地裁判決(交通民集34巻1号319頁)では、後遺障害第12級の事案ですが、刑事事件で有罪に処せられたにもかかわらず、今なお頑なに自らの過失を否認し、全く反省の情が見られない加害者につき、被害者の精神的苦痛を更に深めたと評価せざるを得ないものと慰謝料算定で斟酌されました。この事案では、後遺障害第12級の場合の慰謝料は青本基準で240〜300万円のところ415万円が認められました。青本基準最大300万円のところ115万円も上乗せしたのは被害者側として大変評価出来るものです。

○この判例の慰謝料部分の記述は次の通りです。
7 慰謝料 415万円
 原告の負傷部位、程度、治療経過、原告の身体に残存した後遺障害の内容、程度のほか、以下の事情を考慮した。すなわち、被告は本件による業務上過失傷害事件において有罪に処せられたにもかかわらず、今なお頑なに自らの過失責任、損害賠償責任を否認し、本件事故の原因が専ら原告にあるなどと述べて全く反省の情が見られない。これは、重い後遺症に悩む原告の精神的苦痛を更に深めたと評価せざるを得ない、という点である。


○被告が頑なに自らの過失責任を否定した問題の事案は次のようなものです。
先ず判決で争いのない事故態様です。
 税務署通り方面から本件交差点に左折進入し、中野方面と四谷方面とを結ぶ道路(青梅街道。以下「本件道路」という。)を四谷方面に向かおうとしていた被告車が、本件交差点出口付近に設置された横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)上において、被告車進行方向の右方(本件道路南側歩道)から左方(本件道路北側歩道)に向かって本件道路を横断走行しようとした原告車(※自転車)と衝突した(以下「本件事故」という。)

この事故態様での原告と被告の過失評価主張は次の通りです。
(一)原告及び原告承継参加人の主張
 本件事故は、被告が、本件交差点を左折後、本件横断歩道を通過するに当たり、前方左右を注視して安全確認を尽くすべき注意義務があるにもかかわらず、これを怠り、被告車進行方向右側から左側に横断進行しようとした原告車を看過したことに起因するものである。

(二)被告の主張
(1)被告は、本件横断歩道手前で停止し、歩行者をやり過ごした上、前方左右を確認した上で進行したものである。
(2)本件事故は、原告車に乗車した原告が、前傾したかなり低い姿勢の状態で相当な高速で被告車の進路前方を横切ろうとしたことに起因するものであって、被告には何ら落ち度はない。
(3)また、被告が、右方確認をした上で被告車を発進させて進行した以上、本件横断歩道を横切ろうとする被告車が優先するのであって、非優先車である原告車の動静を注視すべき義務は、信頼の原則により免除されるべきである。
(4)仮に、被告に損害賠償責任があるとしても、本件事故は、非優先的な地位にある原告が、夜間、前方を注視しないまま自転車を飲酒して横断歩道上を高速走行したことに起因するものであるから、75%の過失相殺をすべきである。


○上記主張に対する裁判所認定概要は、
 信号のある交差点を左折進入した加害貨物車に、左方横断歩道を加害車の右から左に横断する被害自転車が衝突したもので、横断歩道進入時には既に歩行者信号は青色点滅を示していた事から被害自転車にも過失はあるが、その過失割合は25%で、加害自動車の過失割合は75%である
と言うものです。