本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

その他交通事故

「自動車運転過失致死傷罪」の創設

○自動車運転中の過失で人身事故を起こしたとき刑が重くなる「自動車運転過失致死傷罪」の創設を盛り込んだ改正刑法が平成19年5月17日の衆院本会議で可決・成立し、平成19年6月には施行されるようです。

○法務省の改正理由は、「自動車運転による死傷事故の実情等にかんがみ、事案の実態に即した適正な科刑を実現するため、自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた者に対する罰則を強化するとともに、危険運転致死傷罪の対象となる自動車の範囲を改める必要がある。」とあります。

○これまでは普通の交通事故事件は、刑法第211条「 業務上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も、同様とする。」の業務上過失致死傷罪として最高刑が5年でした。

○今後は交通事故事件は、「自動車運転過失致死傷罪」となり、刑法第211条2項で「2 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金に処する。」 と最高刑5年が7年アップされました。更に今回の刑法改正では、刑法208条の2危険運転致死傷罪の対象が「四輪以上の自動車」から「自動車」になり、オートバイやバイクなどの二輪車も含まれることになりました。

○最高刑の5年が7年になると言うことは、酌量減刑により刑期が2分の1になっても最高3年6月で執行猶予が付かない刑期とすることができます。一般刑法犯の長期7年以下の犯罪は逮捕・監禁、未成年者略取・誘拐等がありますが結構重い犯罪です。この改正によってこれまでは執行猶予とされた事案がどれだけ実刑に転ずるかは不明ですが、いずれにしても実刑が増えることは間違いないと思われます。

○となると実刑、執行猶予の限界事例で、何としても実刑は免れたいとの交通事故加害者は公判中に被害者側と示談を交わし、被害者側から宥恕(許すこと)の文言の入った示談書を取り付ける必要が生じますので、交通事故損害賠償請求交渉が被害者側に有利になるはずです。

○刑事事件の公判中には損害が確定せず示談が出来ない事案も多くありました。これらは、任意保険が入っているので適正な損害賠償がなされることは確実であると言う弁論をしていましたが、今後は、公判中に出来るだけ多くの内金賠償をして誠意を示すべきおくべき事案も出て来るはずです。保険会社が内金支払に応じるかどうかは疑問ですが。