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小松亀一法律事務所は、「交通事故」問題に熱心に取り組む法律事務所です。

休業損害逸失利益

家事労働の逸失利益−特に高齢者主婦の場合

○家事労働を行ってきた女性が交通事故で受傷して後遺障害を残したり死亡した場合、この家事労働に休業損害や逸失利益が認められるかどうかは、「家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げている」(昭和49.7.19最高裁判決)として肯定されています。

○問題はその金額の算定方法ですが、現在は女子労働者の全年齢平均賃金によるとされており平成16年賃金センサスによれば年収約351万円にもなります。

○平成11年に発表された東京・大阪・名古屋の各地裁の「交通事故による逸失利益の算定方式についての共同提言」によると「家事労働についての逸失利益は原則として全年齢平均賃金によるも、年齢、家族構成、身体状況及び家事労働内容等に照らし、生涯を通じて全年齢平均賃金に相当する労働を行う蓋然性が認められない特段の事情が存在する場合には年齢別平均賃金を参照して適宜減額する」としています。

○但し家事労働い従事することが財産上の利益になるのは、これが他人のために行う労働である場合であり、自分自身の身の回りのことを行うのは財産上の利益にならず、一人暮らしの女性が死亡した場合は原則として逸失利益も休業損害も認められないとされています。

○しかし判例には一人暮らしで無職の78歳の女性に、78歳で家事労働に従事していたとして65歳以上の女子労働者学歴計の平均賃金293万8500円の基礎収入を認めた事例(東京高裁H15.10.30、判例時報1846号20頁)もあります。

○70歳以上の高齢者主婦の逸失利益について判例には次のようなものもあります。尚、平成16年学歴計女子労働者65歳以上平均賃金年収は約307万円です。
・息子(52歳)と2人暮らしで家事の一切を行っていた78歳の女性について、年齢、家族構成、息子の健康状態等からの家事労働の実態を総合して65歳以上女子平均賃金の70%を基礎に逸失利益を算定(東京地判h12.5.24)。

・息子の経営する会社の経理を担当し年収180万円を得て息子と2人暮らしで1日2時間程度家事労働に従事したいた75歳女性について、65歳以上女性平均賃金を基礎に逸失利益を算定(岡山地判h10.10.20)。

・息子夫婦と3人暮らしで息子の妻と共に家事に従事していた83歳の女性について家事負担割合等を考慮して全女子年齢平均賃金の50%を基礎に逸失利益を算定(東京地判h10.3.24)。

・夫と二人暮らしで家事をこなしていた86歳女性について健康状態、生活状況等を考慮して65歳以上女子平均賃金の50%を基礎に逸失利益算定(神戸地判h8.5.23)。

・共稼ぎの娘夫婦と同居し娘に代わって家事を担当し且つ農業にも従事していた77歳の女性について65歳以上女子平均賃金の80%を基礎に逸失利益算定(東京地判h5.10.29)。


○これらの判例を概観すると高齢者主婦の場合の逸失利益は、まさにケースバイケースで実際他人のための家事労働をどの程度行っていたかによってその金額が決められていることが判ります。
尚、家事労働について休業損害や逸失利益が認められた場合、家事労働を填補するために家政婦等を雇って支出した費用は家事労働の休業損害に含まれ二重に請求することは出来ません。