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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

男女付合・婚約・内縁

婚約により将来の婚姻成立後夫婦の地位侵害を認めた判例全文紹介2

○「婚約により将来の婚姻成立後夫婦の地位侵害を認めた判例全文紹介1」の続きで、結論部分です。
婚約は将来婚姻をしようとする当事者の合意であり、婚約当事者は互いに誠意をもつて交際し、婚姻を成立させるよう努力すべき義務があり(この意味では貞操を守る義務をも負つている。)、正当の理由のない限りこれを破棄することはできない」、
そして
婚約当事者の一方及びこれと意を通じまたはこれに加担した第三者の違法な行為によつて婚約当事者の他方が婚約の解消を余儀なくされ、あるいは婚姻をするには至つたものの、これを解消するのやむなきに至つた場合はもとより、解消に至らず婚姻を継続している場合でも、少なくとも婚約の破棄あるいは離婚するについて正当な事由があつて、婚約あるいは婚姻関係が円満を欠き、その存続が危ぶまれる状態(婚姻破綻のおそれ)に至つた場合にも婚約当事者の有する前記法的地位の侵害があると解するのが相当」としています。


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三 思うに、婚約当事者は互いに一定期間の交際をした後婚姻をして法律、風俗、習慣に従い終生夫婦とし共同生活することを期待すべき地位に立つ。婚約は将来婚姻をしようとする当事者の合意であり、婚約当事者は互いに誠意をもつて交際し、婚姻を成立させるよう努力すべき義務があり(この意味では貞操を守る義務をも負つている。)、正当の理由のない限りこれを破棄することはできない。

 婚姻はその届出と届出時における真意に基づく婚姻意思の合致によつて、成立するから、婚約当事者の一方が婚姻意思を失ない、婚約を破棄したときは、他方は婚約の履行として届出を強制することはできず、正当の理由がなく婚約を破棄した者に損害賠償を請求しうるにすぎない。しかし、その故をもつて婚約は何らの法的拘束力を有しないということはできない。そして、婚約当事者が合意に従い、合意の通常の発展として婚姻した場合に終生夫婦として共同生活を続けるべき義務のあることは疑問のないところであるから、婚約当事者の前記地位は法の保護に値いするというべきであり、これを違法に侵害した者は損害賠償義務を負うといわなければならない。

 ところで、婚約当事者の一方及びこれと意を通じまたはこれに加担した第三者の違法な行為によつて婚約当事者の他方が婚約の解消を余儀なくされ、あるいは婚姻をするには至つたものの、これを解消するのやむなきに至つた場合はもとより、解消に至らず婚姻を継続している場合でも、少なくとも婚約の破棄あるいは離婚するについて正当な事由があつて、婚約あるいは婚姻関係が円満を欠き、その存続が危ぶまれる状態(婚姻破綻のおそれ)に至つた場合にも婚約当事者の有する前記法的地位の侵害があると解するのが相当である。

 つまり、婚約当事者は、婚約の通常の発展としての、将来の婚姻成立後の夫婦の地位(いわば将来の権利)についても、法の保護を受けることができるものというべく、婚約期間中、その当事者の一方または双方に対し、将来の婚姻の破綻を生じさせるような原因を与える第三者の行為は、法の容認しない違法なものといわねばならない。

四 これを本件についてみるに、前記認定事実によれば、被控訴人は、控訴人とAが昭和49年4月7日に婚約し、数か月後に婚姻する約束であつたことを知りながら、同月において3回にわたりAと性関係を結び、そのうえ控訴人に対しては事実を偽つてAとの関係を否定したものであり、控訴人はそれがAの控訴人に対する弁明とも符号したこともあつて、被控訴人とAとの関係はなかつたものと信じ、同年7月5日Aと婚姻したが、後に被控訴人が前記のとおりAと性関係を結んだ事実を知り、強い精神的打撃を受けるとともに、夫婦間に不和を生じ、現在なお婚姻を継続しているとはいえ、婚姻解消のおそれが十分にあることが認められる。

 そうすると、被控訴人は、Aと共同して控訴人が婚約に基づいて得たAと誠実に交際をした後婚姻し、終生夫婦として共同生活をすることを期待すべき地位を違法に侵害したものであるから、控訴人に対し不法行為による損害賠償義務を免れないというべきである。

 前記認定事実によれば、控訴人は被控訴人の侵害行為によつて多大の精神的損害を被つたことが推認され、その侵害態様のほか、控訴人の年齢、社会的地位など本件記載に現われた事情をしんしゃくすると、その慰藉料としては、後記五の慰藉料を含め、50万円をもつて相当と認める。

五 また、前記認定事実によると、被控訴人は昭和49年5月15日頃控訴人に対し、「あらぬ疑いをかけたから告訴する。」と言つて脅迫し、精神的打撃を与えたことが認められ、これは控訴人の身体的、精神的自由を違法に侵害する不法行為というべきであり、被控訴人は前記慰籍料を支払うべき義務がある。

六 以上の次第で、被控訴人は控訴人に対し不法行為に基づく損害賠償として50万円及びこれに対する各不法行為日以降である昭和50年10月21日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるものというべく、本件控訴は一部理由があるから、原判決を主文一項のとおり変更し、附帯控訴は理由がないから失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法96条、92条、仮執行の宣言につき同法196条を適用して主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 山内敏彦 裁判官 田坂友男 大出晃之)