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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

離婚要件

有責配偶者の離婚請求を認めた大阪高裁判例紹介2

○「有責配偶者の離婚請求を認めた大阪高裁判例紹介1」の続きで、今回は、当裁判所の判断の前半部分「認定事実」までです。
 判決全部を紹介した後で私なりのコメントの独立コンテンツで作成します。
 なお、一審判決を前提として、一審判決を修正する形式の判決のため、一審判決内容が判らないと、全貌が明らかにならないのが現在の高裁判決形式の大変不便なところです。量が増えても構わないので、必要な一審判決は全て表示した上で、どの部分をどのように変更したか判るような判決にして頂きたいといつも思うのですが。

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第3 当裁判所の判断
1 判断の大要

 当裁判所は,控訴人と被控訴人の婚姻が控訴人の不貞行為によって破綻し婚姻を継続し難い重大な事由があると認められるところ,当分の間別居生活を続ける旨の調停が成立した後約13年の別居期間が経過しようとしており,子らはいずれも高校生に成長し,当審における家庭裁判所調査官の事実調査の結果からも経済的な面を別とすれば離婚によって大きな影響を受ける可能性は低いこと,これを踏まえて当審で合意された一部和解において,控訴人が離婚慰謝料150万円及び二男の大学進学費用150万円の各支払を約束し債務名義が作成されていることなどの事情をも考慮すれば,現時点においては,破綻の経緯やその後の事情等を十分考えに入れたとしても有責配偶者である控訴人の本件離婚請求を信義誠実の原則に反するものとして棄却すべき理由はないものと判断する。

2 離婚請求の当否について
(1) 認定事実

 当裁判所の認定する事実は,当審における訴訟経過,主張立証及び弁論の全趣旨をも踏まえ,次のとおり補正又は補足するほかは,原判決の「事実及び理由」中の「第4 判断」1(1),(2)記載のとおりであるから,これを引用する。

ア 婚姻後の同居及び別居の期間
 原判決6頁2ないし4行目の「原・被告が同居していた期間(家庭内別居期間を含む)が約10年であるのに対し,その別居期間は,平成6年5月から現在(本件口頭弁論終結時)まで12年以上に及んでいる。」を次のとおり改める。
 「昭和61年2月の婚姻後,平成6年5月の別居までの間の控訴人と被控訴人の同居期間は,約8年間(そのうちいわゆる家庭内別居の期間が約2年間)であるのに対し,別居後の平成6年7月14日に成立した調停で当分の間別居生活を続けることとされた後の調停に基づく別居期間は,当審における本件口頭弁論終結時までで約13年間に及ぼうとしている。」

イ 長男の生活状況
 6頁8行目から同10行目の「しかし,長男は,最近,夜中に電話で呼び出されて出ていき,朝まで帰ってこないなど,素行に問題が生じてきている。」を次のとおり改める。
 「長男は,中学卒業後から,新聞配達などのアルバイトを続けている。アルバイトや趣味の音楽活動のため,家にいる時間が少なく,母(被控訴人)や弟と家で話をしたり一緒に外出したりすることも少ない。しかし,推薦入学で大学の経済学部に合格しており,高校卒業後は,大学に進学し,大学近くの寮で生活する予定で,ほぼ自立できる状況になっている(調査結果の報告)。」

ウ 二男の生活状況
 6頁下から12行目の文末に次のとおり加える。
 「二男は,幼時から控訴人と別れており,父親に親和する気持ちはない。父母の離婚についても関心はなく,特に心配していることはない。高校卒業後は大学への進学を希望しているが,長男はその場合の経済面を心配している(調査結果の報告)。」

エ 子らの持病による生活の支障の有無
 6頁下から9行目の「通院が必要である。」の後に次のとおり加える。
 「しかし,子らがいずれも高校生となった現在では,子らの持病である喘息やアレルギー等の症状も軽くなっており,持病やそのための通院治療などにより,日常生活や学校生活に支障が生じているようなことはない(甲17の1?5,18,20,乙10?12,18?20,調査結果の報告)。」

オ 家庭に父親がいないことが子らに及ぼす不利益
 6頁下から7ないし9行目の「また,子らは,家庭に父親が不在であることから,学校の先生や同級生から不利益な扱いを受けることもある様子で,被告にとって心配の種となっている。」を次のとおり改める。
 「子らは,平成14年に大阪に転居してから,父親である控訴人との間で連絡をとることもなくなった。長男は,離婚した場合,控訴人が子らに対する経済的責任を果たしてくれないのではないか,あるいは,将来就職に際して不利になるかもしれないという不安を持っている。二男は,物心ついた頃には既に父親が家にいなかったこともあり,日常生活上,父親の存在をあまり意識せずに育ってきている。夫婦の別居による経済的な問題は別として,家庭に父親がいないことによって子らの日常生活や学校生活に直接の不利益が生じていることについては,長男についてこれを推測し心配している旨の被控訴人本人の供述はあるが,不利益が生じた具体的な事実を述べるものではない。被控訴人の供述によっても,ほぼ自立し大学に推薦入学予定という長男のしっかりした生活状況からみても,直接かつ具体的な不利益が生じているとまでは認めるに足りず,他にそのような不利益を裏付けるに足る的確な証拠はない。」

カ 被控訴人の家賃支払の状況
 6頁下から3行目の文末に次のとおり加える。
 「被控訴人と子らは,平成14年4月から,被控訴人の実家の近くである大阪市都島区において,家賃月額10万円の借家を借りて住んでいる(乙4の4頁,乙9,14の1?6,15,16,被控訴人本人)。」

キ 婚姻費用の支払状況
 7頁9行目の文末に次のとおり加える。
 「婚姻費用の支払が遅れた原因は,控訴人が○○株式会社に勤務していた時に成立した調停で,平成6年7月から別居期間中,毎月20万円(毎年6月と12月に各18万円を加算)の婚姻費用を分担することを約束したものの,これが転職による収入低下によって困難になったことにもある。婚姻費用の支払が遅れていた平成13年をみても,控訴人の年間所得(支給総額)432万7772円に対し,同年中の婚姻費用支払額は256万円となり,年間に分担すべき額276万円を20万円下回っているが,所得の59.2%の婚姻費用を支払っている。平成14年をみても,年間支払額205万円であり,同年の年間所得623万4950円に対する割合は32.9%となる。平成16年6月の婚姻費用減額審判(甲13)においては,平成14年11月分以降の婚姻費用を月額11万7000円,平成16年4月分以降の婚姻費用を月額12万6000円に減額しており,控訴人は,平成15年6月以降は,現在まで,調停及び審判によって定まったこの婚姻費用を遅れることなく支払っている。(甲13,19)」

ク 子らの医療費
 7頁11,12行目の全文を次のとおり改める。
 「子らの医療費(健康保険の自己負担分)は,平成17年4月から平成18年3月までの1年間をみると年間で6万円程度となっている(甲18)。ほかに,高額の医療費が必要になると見込まれる具体的な見通しが現に存在しているものではない。」

ケ 慰謝料及び二男の大学入学のための養育費の支払約束
 7頁下から11行目の文末に次のとおり加える。
 「控訴人は,当審において成立した一部和解において,離婚慰謝料150万円と二男が大学に入学する場合の養育費150万円(毎月払いの養育費とは別)の支払を約束し,債務名義を作成した。この約束は,被控訴人の控訴人に対する訴訟,審判手続におけるその余の請求及び申立てを制限しないことを前提としてされたものである。したがって,被控訴人が上記の支払を超える慰謝料や財産分与の支払を求めることは,その当否は訴訟や審判で判断されるとはいえ,訴えや申立て自体は上記の一部和解の合意によって妨げられるものではない。」