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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

財産分与・慰謝料

扶養的財産分与として妻にマンション賃貸を命じた例6

○平成21年5月28日名古屋高裁判決(判時2069号50頁)の論点の退職金・確定拠出年金・年金についての当事者主張を裁判所判断を紹介します。

○退職金等について、妻Aは控訴審では、以下のように主張しました。
・退職金の具体的内容については別紙財産目録に記載されているようで判決本文にはありませんが、おそらくは婚姻終了時点での退職金を請求したものと思われる
・平成20年8月31日時点残高約337万円の確定拠出年金についての退職金規程を提出して正しい金額を出すべき
(確定拠出年金とは私的年金の一つで現役時代に掛け金を確定して納め、その資金を運用し損益が反映されたものを老後の受給額として支払われる年金。すなわち、掛け金は確定した額と決まっているが将来の受給額は未確定である。「日本版401k」とも言われる。)
・本件婚姻期間中の保険料納付等に対する寄与は0.5


○これに対する夫Bの主張は以下の通りです。
・夫B勤務会社は経営が極度に悪化しており16年先の退職時に退職金を受け取ることが出来るかどうか不確かである。
・仮に財産分与対象とする場合、同居期間に限定し、且つ、支払時期を退職時にして支払を停止条件とすべき
・確定拠出年金制度を導入したのは別居後で財産分与対象にならない
・年金分割は同居期間中の標準報酬総額を前提とすべき


○これに対する裁判所認定は以下の通りです。
・夫Bには@退職金規則による退職金、A平成17年10月以降導入確定拠出年金制度による平成20年8月時点での掛金類型約337万円がある
・@についての同居期間対応部分、Aについての同居期間蓄積部分があると思われるが、@、Aいずれも夫Bが60歳の定年退職時に現実化する財産であり口頭弁論終結時44歳から定年まで15年以上先のことでその支給の確実性は不明確でまた別居時の価額算出も困難で直接清算的財産分与の対象には出来ない
・妻Aへの扶養的財産分与の要素として考慮し、居住マンションの賃借権を認定


○「将来の退職金請求権は財産分与の対象になるか2」記載の通り、「将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合には、将来受給するであろう退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する分を算出し、これを現在の額に引き直したうえ、清算の対象とすることができる」のが離婚実務における一般論です。

○本件では夫B勤務会社の経営が悪化している事情と退職金受給時の定年までまだ15年以上あることから、「退職金を受け取れる蓋然性が高い」とは言えず現時点での引き直し計算も困難であることから直接清算的財産分与の対象とは出来ないとしました。定年が15年以上先でも公務員の場合は「受け取れる蓋然性が高い」と評価出来ますが、民間会社の場合は、評価されなくてもやむを得ないと思われます。しかし、それでは妻Aに酷だと言うことで扶養的財産分与の名目で居住マンションに賃借権を認めることでバランスを取った判決で具体的紛争解決としては適切な判断と思われます。