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小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

男女付合・婚約・内縁

内縁関係の成否に関する参考判例−共同生活3

○内縁関係の成否に関する考え方と参考判例紹介を、更に続けます。
今回は、内縁関係成立要件の一つである「事実上の夫婦共同生活の存在」が更に緩和されている例で大阪地裁平成3年8月29日判決(判タ778号153頁、家月44巻12号95頁)です。

事案は、
@国家公務員Aは、昭和63年11月22日に死亡し、その遺族に退職金約2105万円、共済短期掛金還付金その他約50万円が支払われることになった
AAには妻子がなく、A死亡当時の相続人はAの実母Bであった
BBも死去し、Aの兄弟姉妹であるXら3人がBの相続人となり、上記退職金等給付請求権を相続したと主張した
CAの死亡当時同人と事実上婚姻関係と同様の事情にあったYがAの退職金等給付請求権があると主張した
Cそのため国と共済組合は、過失なくして債権者を知り得ないとの理由で退職金等について供託手続をした
DXらがYに対し、供託金還付請求権確認を求めて提訴した

というものです。 

○この事案では、退職金約2105万円の受給請求権について、Yが、国家公務員退職手当法第11条第1項にいう「届出をしていないが、職員の死亡当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者」に該当するかどうかが最大の争点となりました。

この点について前記判例は、
AとYは、昭和47年2月、被告勤務先上司の仲人で見合いをして交際を始め、数ヶ月後に肉体関係が生じたこと
昭和49年にはお互いに近くに居住し、双方の住まいを行き来する交際を続け、病弱なAが持病で3ヶ月入院したときYが看護に努めたこと
Aは、親兄弟からYとの交際を諦めるよう忠告され,一時交際が中断したが、昭和54年Yがマンションを購入してから交際が復活し、AがY方に泊まることが多くなり、夫婦として宿泊旅行をするなどし、双方の住まいを行き来する生活を続けたこと
等からYはいずれAと正式に婚姻届出がなされることを前提として夫婦同様の認識で関係を係属してきたもので
AとYとは互いに別々の住まいを持っていたとはいえ、前記認定のとおり、互いに相手方のマンションに行き来して、特にAはYのマンションに頻繁に寝泊まりして生活し、夫婦としての宿泊旅行もしており、また、前記認定の事実からすれば、身体的に虚弱なAはYを精神的にも日常生活の上でも頼りにし、Yもこれに答えて生活していたものであり、AとYとの間には、精神的にも日常の生活においても相互に協力し合った一種の共同生活形態を形成していたものと認められるので、AとYとは事実上夫婦と認めるのが相当である

と認定しました。