本文へスキップ

小松亀一法律事務所は、「男女問題」に熱心に取り組む法律事務所です。

セクハラ

セクハラを受けたと上司を退職に追い込んだ重〜いツケ1

「妻の不貞行為の相手方の勤務先への通知と損害賠償請求等」で、「自治体職員の上司からセクハラを受けたとして、自治体の長に懲戒処分を求めるなどして上司を退職に追い込んだ女性が、その上司から退職による逸失利益等約1億1000万円を請求されて何と6545万円が認容」された平成18年10月30日東京地裁判決の結論を紹介しました。

○この判決は判例時報等判例集には未登載で新日本法規の判例マスターに掲載されそれを有料判例検索サイトウエストロー・ジャパンで引き継いで掲載しているもので、その要旨説明は以下の通りです。
要旨
◆地方公共団体の職員間であった性的行為を持ったことによるセクハラ行為につき、セクハラを受けた女性職員(本件被告Y1)から上司に当たる職員(本件原告)への裁判外の和解が成立したこと、その後当該和解金の一部しか支払いがなかったことにより別件訴訟(和解金等請求事件)が提起され、残金及び遅延損害金の支払いもあったことを前提に、当該和解が無効であるとして原告が被告に不当利得返還を求めるとともに、和解後に被告Y1が勤務先に対して原告の行為が強姦未遂であるとして懲戒処分を求めたり、被告Y1の母親(本件被告Y2)も知人を介して地方公共団体の長に働きかけたため、原告は退職を余儀なくされたとして被告らに損害賠償を請求した事案。

原告Xの被告Y1への少なくともセクハラがあったことは認めつつも同被告の外傷性癒着による支配・従属関係は一定期間後は存在しなくなったにもかかわらずその後も自らの意思で原告と性的関係に及ぶなど原告の行為を事後的に追認し、損害賠償請求権を黙示的に放棄したものであると認定判断した上で、その後も被告Y1が民事訴訟の提起や懲戒申立等の権利行使として許される限度を超えた社会的相当性を欠く行為があったとして、強迫行為によって上記和解は取り消されたこと、被告Y1のPTSD罹患にも疑問があるとして否定し、原告は同被告の懲戒申立により退職に追い込まれたこと、さらには被告Y2の同Y1との共同不法行為の成立は否定した上で、原告の被告Aに対する和解金の不当利得返還請求の全額及び損害賠償請求の一部を認容


○この事案は大変複雑で争点も多岐に渡り、判決全文は4万数千字に及ぶ大変長いものですが、驚いたのは被告Y側には2人の女性弁護士がつき、そのうち1人はジェンダー法やセクハラ関係著書も多数あるセクハラ被害者専門の大家と評価されている方であるところ、原告X側には代理人表示が無く弁護士を代理人としない本人訴訟であったことです。

○4万数千字の長文判例を斜め読みし更に少しずつ熟読していますが、大変参考になる点を含んでおり、徐々に紹介していきます。尚、私の判例検索は、従前は新日本法規のweb版判例マスターでしたが、現在はこれを引き継いだウエストロー・ジャパン判例検索を利用し、ほぼこれで十分間に合っており、暇な時は男女関係紛争の興味を持てそうなものを探しています。